2014年9月25日木曜日

ヴィヴィアン・マイヤーをめぐる複雑な状況 (上)プラス映画「Art and Craftの感想

 彗星のように現れた写真家ヴィヴィアン・マイヤーに関してはもう二回書いた
 http://nykanwa.blogspot.com/2014/05/blog-post_26.html
http://nykanwa.blogspot.com/2014/08/blog-post.html
 のだが、彼女の作品をめぐる状況はますます混迷を深めており、この問題が
解決しない限り、作品の売買はもちろん展覧会も難しいという状況になってきている。

これには、美術品の著作権はどこにあるかという問題がからんでいる。

あなたが、ある現代作家の作品を買ったとしても、あなたはその作品の著作権を
持ってはいない。(アメリカ法では)つまり、自分の買った作品の絵柄をTシャツに
して売ることはできない。
著作権はあくまでもアーティスト本人(死後はその相続人ないしは組織)が持っている
からだ。

同様に、写真のネガを持っている人が著作権を持っているわけではない。

つまりヴィヴィアン・マイヤーの場合、本人は死んでしまっているから、
その遺産相続人が著作権を持っていることになる。

では相続人はどこにいるのか、という話になる。
彼女は天涯孤独で死んだはずなので、果たして相続人(親族)はいるのか?

頭のいいジョン・マルーフは 、そのあたりを全部わかっていて
系図学者を雇ってリサーチをし、彼女の生まれたフランスで何人かの
“親族”らしき人物を見つけた。そして、その中で一番確実な親族と
思われる人物と取引(というと言葉が悪いが)して、写真に関する
相続権をもらい受けた。

この親族は、シルヴァン・ジャッソー(Sylvain Jaussaud)で、マイヤーとの
関係は「いとこ違い」というものなのである。

おお、なつかしい。「いとこ違い」なんて言葉を聞くのは、何年ぶりであろうか・・。
昨今は、ほんと聞かない言葉だ。

そして、英語ではいとこ違いはfirst cousin once removedと言う。
ほとんどなんだか意味がわからない英語。
once removedって、何がremoveされるのか??(笑)

話が脱線しない範囲で言うが、アメリカの相続は日本とは違う側面がある。
私の周囲にも天涯孤独の友人がいて、その人が亡くなったときには
やはり系図学者を雇ったり、アメリカ全土の新聞に死亡広告を出したりして
親族(相続人)を探すので大変だった。一応八方尽くして探したということが
後で問題が起こったときに重要なのだ。で、相続人は見つからず、
彼の遺産はいくつかの財団に寄付されたがそれもいろいろ大変だった。
(脱線するので、いつかまた)

話を戻すと、ジョン・マルーフはこうして相続人と思われる人物から権利を
もらいうけ(もちろんお金を支払って)、自分がこれらの写真の著作権の持主で
あるという申請を行っていた。(が、まだ著作権をゲットしていなかった)
彼はそれが「もっとも法的で、倫理的なやり方」としている。

 ところが、そこに思いがけない横やりがはいるのだ・・・。

 長くなるので、続きは明日。

あっそういえば、先日ご紹介した贋作者のドキュメンタリー映画「Art and Craft」
見ましたが、あんまり面白くなかったです。マーク・ランディス本人はとっても
ユニークな人なんだけど、ドキュメンタリーとしてはうーーん、という感じ。
本人はこんなにかっこよくないのです。(笑)
その理由はまず、ランディスは贋作を売っていない(各美術館に寄付しただけ)
ので犯罪として成立しないということで、腰砕け。
それと贋作そのものが小品であったり、あまり有名でないアーティストの
作品なので(技術は猛烈に上手い)、スケールが小さい。
その2点でしょうね。

みんな彼に「こんなに上手いなら、どうして自分の作品を描かないのか」と聞くけれど、
彼は自分で描きたいものはないのです。アーティストになるための自己主張に
欠けているのです・・・。

唯一、面白かったのは、FBIのアートクライム部門を設立した(現在はもう引退)ロバート・
K・ウィットマンが出てきた事ぐらいでしょうかね。

ウィットマンは『FBI美術捜査官 奪われた名画を追え』(ボストンのガードナー美術館
から盗まれたレンブラントやフェルメールを取り戻そうとする囮捜査官のノンフィク
ション)の主人公(というか、書いたのは共著者)ですけど、ああ、この人ならマフィア
の中に囮として入っても十分やっていけるなと、変な感想を抱いてしまいました。(笑)

というわけで、続編は明日。