2015年1月12日月曜日

破産したデトロイト市の美術館、危機を回避

新年早々弔事があって、元気ないお正月でした。
そろそろ回復しつつあるけど、こんとは寒波で外へ出るのが億劫です(笑)。

いつも身の周りの話ばかりだと退屈なので、今日は視点を変えて、デトロイトの
話。実は、私は4月末にデトロイト美術館で骨董商山中商会について講演をする
ことになっているので、その予習もかねて。

デトロイト市が180億ドルの負債を抱え、破産を申請したのは2013年。
破産による緊急課題はデトロイト市職員の年金で、このままだと年金が支払え
なくなり、年金生活者(引退した市職員2万人)が生活できなくなってしまう。
現在の市職員も1万人いる。

債権者は、手っ取り早い解決法として市立の美術館であるデトロイト美術館の
保有する資産、つまり美術品を売って負債を支払うように主張した。
(メトロポリタン美術館、ボストン美術館、フィラデルフィア美術館
などは独立した財団。市営であるデトロイト美術館はむしろめずらしい例)。

で、デトロイト市の緊急事態財産管理者に任命されたケビン・オアの
指示で、競売会社が美術館の絵画の価値査定に派遣された。
たとえば、同館(全部で約6万点)には下のような作品がある。
ゴッホ自画像1887年 デトロイト美術館は競売で1922年に購入

エドセル・フォード(ヘンリー・フォードの息子)が買って、
それを後になって息子ウォルターの妻が1996年に館に寄贈した

 この『郵便配達夫ルーラン」などは競売にでれば、多分2億ドルを越す値がつくだろう。

ところが、美術館の絵画売却には各方面から大きな反対の声があがり、
デトロイト美術館を救うために、様々な方法が提案され、最終的には
規模の大きな財団数個から”グランド・バーゲン”と呼ばれる方策があがってきた。
ともかく、提案した財団が基本資金を投入するするので、美術館ほかの関係団体も
資金をプールし、年金システムを救おう、というもの。
これは、経済破綻した自治体の年金システムを複数の財団が救済する初めての、
そして極めてユニークなケースとして歴史に残るものになるということらしい。

レスキューにきた財団9つ(フォード財団、クレスゲ財団、ナイト財団など)は
いずれもミシガン州と密接な関係にあり、合計3億3000万ドルの資金を投入。
そしてミシガン州が同額3億5000万ドルを投入。
これに、デトロイト美術館が1億ドルの資金(個人や財団からの寄付)投入を
安足した。合計7億8000万ドル 。

しかし、年金システム救済にはこれでは不足と債権者たちから文句を言われた
(最低でも8億2000万ドルくらいかかるということらしい)ところで、
自動車企業が合計1億9500万ドル拠出することを決定し、破産裁判所の判事も
この計画を承認した。
(これでも年金の支払額は4.5%くらい減る らしいのだが、年金がゼロになるよりは
まし、ということらしい)

そして、2015年に入って1月6日、デトロイト美術館が1億ドル調達できた(これも
やはりアンドリュー・メロン財団やゲティ財団などが資金を投入)と発表し、
この計画が成立した。
これと引き替えに、美術館は独立法人になる手続きを開始する。

これで、デトロイト美術館は無事、とみんなほっとしている(競売企業はその反対に
 とてもがっかりしていると思うが・・・)。

大規模な財団がある(フォード財団は資産が110億ドル!!というからすごい)
アメリカだから可能な解決法だというしかない。