2015年7月24日金曜日

ブロードウェイ・ミュージカル「ハミルトン」を見た

ここのところ、ミュージカルも芝居もダンスも見ていなかった。
理由があるわけではないけれど、春に出張が続いたのと、
前売り切符を買うのが億劫になって、腰が重くなっていた。
もう少しまめに見に行かねばと思って反省しております。

もっともこの切符だけは3月くらいに買っていた。
この作品「ハミルトン」は昨年末から今年はじめにかけて、オフオフ・ブロードウェイ
の劇場で始まったが、大評判ですぐにブロードウェイ進出が決まった。
当時、「ニューヨーカー」にも、猛烈に長〜い記事が出たし、
見に行った数人の友人たちから強く薦められて、切符を買っていたのである。

アレクサンダー・ハミルトンは独立戦争ではジョージ・ワシントンの副官として闘い、その後トマス・ジェファーソンやジェームズ・マディソンなど並んで、
合衆国憲法の草案作成に加わり、後に「フェデラリスト・ペーパー」を
書き、合衆国初代財務長官となった人物。10ドル紙幣の人物といったら
わかりやすいかもしれない。

ウィキペディアに出てくる肖像画はこんな感じ。

ミュージカル「ハミルトン」は、 ハミルトンを中心に独立戦争とその後の
アメリカ合衆国建国の様子を描き、またハミルトンのセックススキャンダルや決闘に
よる死 といった一生を描いた伝記ミュージカルだ。全体的にユーモラス。
独立戦争で負ける側のイギリス国王も、トマス・ジェファーソンもとっても
おかしいキャラクターだ。

しかし、このミュージカルの画期的な点、そしてブロードウェイで大ヒットしている
理由は、 音楽がヒップホップ(ラップ音楽)で、出演者は全員(イギリス国王を除き)
がアフリカ系かラテン系だという点にある。ヒップホップは何かを主張する音楽
という側面があるから、こういう物語にはあっているかもしれない。

ジョージ・ワシントンも、トマス・ジェファーソンもアフリカ系。
そして、ヒップホップ音楽のエネルギーがこの作品のエネルギーになって、
建国直後の若いアメリかのエネルギーと混乱をよく捉えている。

先週はオバマ大統領もワシントンから見に来たらしい。

そして、ハミルトンを演じるリン=マニュエル ・ミランダは、プエルト・リコ系。
このミュージカルの原作・脚本・作詞・作曲をやった上、
主役を演じるというすごい才能の持主だ。まだ30歳を出たばかり。
高校時代から飛び抜けた才能の持主だったようで、大学時代に書いた
作品を元にしたミュージカル「In the Heights」でトニー賞を取っている。

なかなかいいビデオクリップがないのだが、下はまあまあ。本当はもっともっと
エネルギーがあって、観客席を圧倒する感じなのだ。
でも最初から最後までラップ調で、セリフは早口で私にはほとんど聞き取れない。

ミュージカルとしては偏っている点もある。ダンスナンバーはあまり期待できない。
いまリバイバルでやっている『パリのアメリカ人』のようなロマンチックなダンス・
ミュージカルが好きな人には全くお勧めできない。 ハミルトンの妻が唱う曲何曲か
(これはラップではないのだが)はなんかセンチメンタルであまりおもしろくない。

そういう点はあるけれど、実際にはハミルトンを除いてほとんど全員が裕福な家系の
出身だった建国の父たちを、奴隷と移民を先祖に持つキャストでリベンジしてみせた
痛快さはなかなかいい。

もともとはピュリッツアー賞をとったハミルトンの伝記を読んだミランダが、
ハミルトンと自分の父の類似を見つけて、これはヒップホップの曲になると思ったところ
から始まったらしい。ハミルトンはカリブの島で、スコットランド人父と娼婦の子として
生まれたが、すぐに孤児となり、独力で軍隊に入り、その後弁護士に。
ミランダの父はプエルトリコ出身でやはり孤児。独学でニューヨークの弁護士となり、
政治コンサルタントとして成功する。

たしかに共通している点はある。しかし、ハミルトンの伝記を読んだとたんに
ラップの詩が頭に浮かんだというのだから、そのひらめきはやはり才能と呼ぶしか
ないだろう。

その最初に浮かんだアレクサンダー・ハミルトンのラップ曲をもう少し洗練させたものを、
オバマ夫妻の前で披露しているビデオがある。
これは、2009年にホワイトハウスに招待されたときのものだというから、
それがこのミュージカルに結実するまで6年かかっていることになる。


詩は、決闘でハミルトンを殺したアーロン・バー(後の副大統領)がハミルトンを
語っている形式になっている。舞台メーキャップしてないミランダの顔はとても若いが、
自分の作品に自信があるという感じは伝わってくる。おまけでどうぞ。