2016年4月19日火曜日

ドン・チードルの映画「Miles Ahead」を見た

ドン・チードルが主演、監督、共同脚本、共同製作をつとめたマイルス・ディビス
の伝記映画「Miles Ahead」をやっと見た。

これは昨年のNYフィルム・フェルティヴァルのクロージング作品だったのだが、
私はその頃運悪く日本へ出かけていて、見損なっていた。
やっと劇場公開されて見る事ができ、最高に楽しんだ。

伝記映画といっても、彼の人生に忠実ではない。あくまでもフィクション。
有名な曲がどうやって作られたかなんてエピソードもないので、そういう
話を期待する人には肩すかしだろう。
ほぼ全編チードルが作った物語だ。しかし、マイルスだったら十分起こりえた
物語で、このあたりはチードルがマイルスに乗り移って(笑)脚本を書き、
演じたというのがわかる。

 マイルスは1975年から4,5年の間まったく演奏しない時期があったが、
物語はその時期に焦点をあてている。
家に閉じこもりっきりでマイルスがミックスした音楽テープが盗まれ、
それを取り戻すためにマイルスがクレージーな 追跡をするというストーリー。

ローリングストーン誌の記者がマイルスと一緒に追跡する役目で登場する。
演じるのはイアン・マクレガーなのだが、そもそもこの役は
白人が登場しないと製作資金が出ないと言われて、作りだされたのだそう。

 そのストーリーにフラッシュバックで若い頃の出来事が色々と混じる。
ビル・エバンスも、ギル・エバンスも、ハービー・ハンコックも出てくる。
(もちろん本人ではなく役者が演じている)
妻になったフランシス・テイラーも登場する。
(彼女は「Someday my prince will come」のジャケット写真の人物なのだ。
私は知らなかった・・・)
しかしこういったレコーディングや重要なアルバムはどちらかとアトランダム
に登場し、年代も入り交じっている。そういった食い違いが気に入らない評論家もいるようだ。

チードルは、マイルスにホントによく似ている。トランペットの吹き方もそっくり。
(映画は構想ほぼ10年。その間にトランペットを勉強したのだそうだ)
音楽は、マイルスの曲とロバート・グラスパーがこの映画のために作った曲が
上手に混じっている。

映画のクレジットの背景で、晩年のマイルスにそっくりなチードルが舞台の上で
バンドと一緒にトランペットを吹いている映像があって、よく見るとこちらは
本物のハービー・ハンコックとウェイン・ショーターなのだ。あれれっと思うと、
一方でエレクトロニック・ベースはエスペランザ・スポールディング で、ギターは
ゲイリー・クラーク。こういったメンバーを後ろにマイルス(チードル)が
トランペットを吹いている。
そう、映画の中身と同じで、時代は無視。
虚実ないまぜだが、一方で魂は ちゃんと捉えている。

ジャズ好きな人には絶対にお薦め。