2016年5月20日金曜日

ホイットニー美術館で始まったポートレート展「Human Interest」


話は違うが、ミュージカル「ハミルトン」がトニー賞の16のカテゴリーに
ノミネートされているということが話題になっている。
次々と記録を破っているわけだ。
先日友人と話したら、切符がまったく手に入らない、と嘆いていた。
(いま、サイトに行って見たら、切符2枚を1200ドルで売っている・・。
なんなの、それ?)
 早い段階で見に行った私は運がとてもよかったわけだ。

さて、本題。

昨年オープンしたホイットニー新館の企画展第2弾「Human Interest:
Portraits from the Whitney's Collection」展
が始まった。来年の2月12日までだが、作品入れ替えが何度かあるようだ。

第1回の企画展「America is Hard to See」に続いて、同館のコレクション
から選ばれた作品で構成されているが、その幅広さはやはり驚くべきものだ。
(展示作品数は 248点)
「肖像〈ポートレート)」というコンセプトも大きく押し広げている。
人物が出てこない"肖像画”が 並んでおり、ポートレートとは何か
と考えさせられる。

まず、普通の肖像画・写真だが、これもなかなか面白かった。

宮武東洋の写真 伊藤道郎のポートレート
まず、私がホィットニーのこの展覧会の内覧に行くきっかけとなったのが、上の
写真。この写真が宣伝素材のどれにも使われていて、アレッと思って出かけたのだ。

宮武東洋が写した伊藤道郎。彼はダンサーで、1912年に渡欧し、
イェーツの能劇「鷹の井戸」の振り付けをし、後にアメリカに渡り
マーサ・グラハムに影響を与えた(グラハム本人はそれを認めなかった)。
ハリウッドで活躍し、交換船で帰国するが、戦後は銀座のアーニー・パイル
劇場の監督をつとめて、東京オリンピックの開会式の監督をするはずだったが
死去。

実は伊藤道郎は、私がはじめてライターとして書いた最初の題材だった。
(某文芸誌に)息子のジェリー伊藤にもインタビューした。

カリフォルニア大学から道郎の弟子のヘレン・コールドウェルが伝記〈英語)を出版し、
道郎の実弟である千田是也氏が詳しい解説をつけた翻訳が出版されている〈早川書房)。
(この千田氏の解説がすばらしくて、私は脱帽した記憶がある)

というわけで、道郎の写真に引っ張られて内覧に行ったというのが実情。
キュレターのスコット・ロスコフに、なぜこの写真をPR素材として選んだのか
聞いてみたところ、写真としてとても強いからという答えが返ってきた。
特に道郎のことを知っているわけではないようだった。

道郎の写真は、実際にはこんな風に集合写真の1枚として使われているだけなのだが

アリス・ニールによるウオーホルの有名なポートレート

ホイットニーのフロア2階分をつかった展覧会は見応えがある。古典的な肖像画から、
有名人肖像写真(パパラッチによる写真も)、ウォーホルによる肖像画、ファッション
写真、アーティストのポートレート、ストリートの肖像写真などに加え、人物なしの
所蔵画(本人は出てこないが、見ただけでその画家の個性がわかる作品。ジョージア・
オキーフの花、『優雅な生活が最高の復習である』でも書かれたジェラ
ルド・マーフィーの絵、ジャスパー・ジョーンズなど)というセクションもあった。

興味深かったのは、パスポート写真や身分証明書のようなものを組み合わせた作品を
展示したセクションで、これは学校や国家など社会制度によって個人が規定
されることをある種のポートレートとして見なした作品群。

その最たる作品が下のマイク・ケリーによるもので、彼が自分が教育を受けた
学校(小学校からアートスクールまで)すべての建物のミニチュアを作り、その総計を
自分のポートレートとした。 ↓ 
自分の受けた教育の総和が自分であるという発想で、
人を食った作品だけど、マイク・ケリーらしくておもしろかった。

一度では消化しきれなかったので、多分今後何度も見に行くことになるだろう。