2016年12月8日木曜日

真贋論争 (続)

シカゴへ行ったら、ダウンタウンの劇場でHamiltonをやっていた。
調べたら、来年3月にはサンフランシスコで、秋にはロンドンではじまるようだ。
そうすると、ブロードウェイの公演のチケットは取りやすくなるのだろうか?
すでにオリジナルのキャストは大部分残っていないから、どこで見てもいいのかも
しれない。

さて、ゴッホのスケッチブックの真贋論争はさらに熱くなっている。
新聞での報道(主として出版社とふたりの著者に取材して書かれた)
に反論する形で、ゴッホ美術館は再度The Lost Arles Sketchbookが本物ではありえない、
と前よりもさらに断定的な口調の声明を出し、出版社と著者に質問をつきつけた
からだ。

アート界はこれに少し驚いている。これまでゴッホ美術館はどちらかというと控え目
で、積極的 に何かを主張したり、口出ししたりしてこなかったからだ。ところが
今回は違う。二度目のプレスレリースでさらに詳しく反論し、著者たちを批判している。
https://www.vangoghmuseum.nl/en/news-and-press/press-releases/response-to-vincent-van-gogh-the-lost-arles-sketchbook-drawings-not-by-van-gogh-and-notebook-unreliable

美術館側が真作でないとする根拠はいろいろあるが、上のリンクのプレスレリースから
わかりやすいものとして次の2つを上げておく。

まず、スケッチブックに使われているインクの問題。
このスケッチブックに使われているインクは3種類ある。ほとんどが茶で、ところどころ
黒と赤のインクも使われている。著者側は茶色のインクを検査した結果、それがセピア色
のシェラックインクだったとしている。(赤と黒は検査していない)

一方美術館側は、1888年から1890年の間(アルルからオーベール・シュル・オワーズに
住んでいた間)ゴッホのスケッチ、ドローイングに茶色のインクが使われたことはなく、
主に黒色が使われたとする。しかし、それら黒のインクは退色し現在では茶色に見える。

一方、このスケッチブックに使われたインクは、退色して茶色なのではなく、最初から茶色
なのであるーーとゴッホ美術館は主張する。

この本の著者は、茶色のインクはゴッホの手紙に使われている、と主張するが、
それらの手紙は、1881〜1883年(ブリュッセル、ハーグ在住時代)に書かれた
ものであり、アルルに住んでいた時期ではない、と美術館は反論する。

さらに退色の問題でいえば、 スケッチブックは閉じて保管されているので、
インクはそれほど退色しないはずだ、とも美術館は言う。

つまり美術館側は、このスケッチブックの作者は、ゴッホの他のドローイングが茶色の
インクで描かれているのを見て、それが黒いインクの退色したものとは知らずに、
茶色のインクで描いたのではないかと言っているわけだ。

 もうひとつわかりやすいのは、絵に描かれている間違い。
たとえば、「アルルの跳ね橋」では、橋を上げ下げする作業員の小屋が運河の反対
側に描かれている。 サンレミの施寮院でゴッホが入っていた建物の描き方にも
間違いがある。スケッチブックにはこの手の間違いが多い、とゴッホ美術館。

その他、色々な点が指摘されている。美術館側は、公開シンポジウムをする前に
まずこれらの指摘に答えてもらいたいとしている。

アメリカではスケッチブックは11月末に発売された。
https://www.amazon.com/Vincent-van-Gogh-Arles-Sketchbook/dp/1419725947/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1480895341&sr=1-1&keywords=van+gogh+lost+sketchbook



もう少し値段が安ければ実物を手に取って感触を見てみたいが、ちょっと高い・・・。
なので、真作派の主張を十分に書くことはできないのだが・・・。

またこの本を出版したパリの出版社が、ゴッホ美術館のせいで売れ行きが大幅に
減ったことに対し、訴訟を検討中という記事もあった。今後もフォローしていく
予定。