2017年7月8日土曜日

メトロポリタン美術館 川久保玲展 

5月1日の内覧に参加したが、前代未聞な混み方で、作品や展示の状態を見るのは困難だった
ので翌々日に出直した。内覧だけ見て記事を書かねばならなかったライターは、お気の毒だった。
 まあ、記事の内容によるのかもしれないが。

メディアがこれだけ注目したのは、存命デザイナーの展覧会がわずか2人目
(1983年のサンローラン以来)だから、それからやはり型破りの川久保玲だから、
だろう。内覧には日本人もとっても多かった・・。

翌々日はメンバーのみが入れる日だったので、人は少なくきちんと見る事ができてほっとした。
プレス発表でのケネディ元駐日大使のスピーチ
その夜、キュレーターのアンドリュー・ボルトンとエイドリアン・ジョフィー(川久保さん
の夫)の対談に出席したがこれが興味深かった。

「Rei Kawakubo/ Comme des Garcons: Art of In-between 川久保玲:間の技」
結論を一言でいうとすばらしい展覧会。気合い入っているし、
展示デザインもよかった。

川久保玲は信念を持って服を作っている人だ。
彼女の服は哲学者の言葉のようで、なるほどと思ったり、色々考えたりする。

なによりも面白いのはこれが「回顧展」ではないことだ。作品の半分以上は、
2014年以後に発表されたもので、一番新しいコレクションの作品まで展示されている。
この速さと”同時性”にまず感心した。
自分の仕事はまだ終わったわけではないから、これを回顧展にしたくない、という彼女
の強い意志があちこちで感じられた。

 作品の半分以上が2014年以後に作られた服なのだが、2014年は彼女が「Not making clothing 洋服を作らない」と宣言した年だ。前半は
ボロルックとかカットアンドソーとか、彼女を有名にした“ルック”
が並んでいる。懐かしいと思う人もいるかも。

そして、こぶドレス(これが1998年くらい)あたりから、
彼女は徐々にファッションから離れていく。
右の2点がコブドレス 全体的にドレスの発色も大変いい。これは照明が蛍光灯であることと関連している?

洋服の持っているルールや着る人を美しく格好良く見せるという側面とは関係のない
独自の世界に入っていく。
 特に2014年に「服は作らない」と宣言してからは「ブルーウィッチ」
とか、落花生の殻(袖がない、転んだら危ないかも・・・)のような
彫刻のようなものを作りはじめる。どれも迫力があって、とてもおもしろい。

ブルー・ウィッチ(青魔女)ど迫力

落花生の殻みたいと思うのは私だけ?
面白いと思えるし、客観的に楽しんで見る事ができるのは、これらの“服”を自分が着ると
想像できないからなのかもしれない。服を見るときは、多かれ少なかれ「自分が着たら
どう見えるか?」を気にするが、川久保の服はそういうことを思わない
(少なくても私は思わなかったけど・・)。

展示デザインは川久保本人が手がけたという。東京のどこかの倉庫か体育館のような
場所で、会場の実物大のモデルを作って、全体の展示を考案したとか・・。
(その費用はメットが払ったんでしょうか? やっぱりそうだよね。)

基本的には円錐、逆円錐、円柱、四角、三角といった幾何学的モジュールを組み合わせて
作っている。そして、これまで(たとえば、アレクサンダー・マックィーン展など)
ドラマティックなスポット照明を多様した照明だったのが、この展覧会はその真反対。
天井に蛍光灯を並べ詰めて全体にライトが溢れるような演出。
ちょっと店のレイアウトと共通している点もある。

逆円錐型 間を歩いているとリチャード・セラの彫刻を思い浮かべる

こういう風に作品がチラッと見える所がいい
  「洋服のルールとは関係ない独自の世界」と書いたが、では独自なものとは何なのか?
カタログ・エッセイを読むと、アンドリュー・ボルトンはそれを「間」と「無」に
求めている。このカタログエッセイが、とても難しくて読むのに苦労したが、
ようするに彼女の洋服は「禅」だと言いたいみたいだ。つまり彼女が日本人であること
からこういった世界が生まれたと言いたいのか? 私にはそれは大きな疑問だけど。

色々なインタビューなどを読むと、彼女は自分は「新しさ」を常に追いかけてきたと答
えている。ただ、新しさは他のデザイナーも追いかけるだろう。 だから、新しさだけで
独自性が生まれるというものでもあるまい。

人と違うものをどうやって創作するのか。簡単な回答なんて、多分ないのだろう。
ボルトンの解釈にも恐らくは少しの真実が含まれているのだと思う。禅とはいわなく
ても、あの展示を見ると彼女には独特の間(スペース)感覚があると思うし。
 
 展覧会タイトルは Rei Kawakubo/ Comme des  Garçons :Art of the In-Betwen
だが、Art of the In-Between 「間の技」という日本語に統一しているらしい。
誰が決めたのでしょう? 笑 (間ははざまと読ませるのだそうです)
 
 久々に色々なことを考える展覧会だった。

ラベルには説明が何もなく、入口にあるパンフレットにそれぞれの作品の解説が
書いてあるのでそれを読ながら見ていく。これが結構めんどくさくて、慣れるまでに
時間がかかるので、焦らないほうがいい。ゆっくり時間をかけて、どうぞ。
 
これはメトロポリタン美術館が提供している写真。天井の蛍光灯をご覧あれ。© Metropolitan Museum