2017年12月22日金曜日

ワシントン・ナショナル・ギャラリーのフェルメール展 

ルーヴル、アイルランド国立美術館と巡回してきた「フェルメールと風俗画巨匠」展
(Vermeer and the Masters of Genre Painting)がワシントンのナショナル・ギャラリーで
10月半ばから始まったので、行ってきた。

全体は70枚ほど、うちフェルメールは10枚で、他は同時代のオランダの風俗画家、テル・
ボルフ、ダウ、メツウ、マース、デ・ホーホ、ファン・ミーリス、ネッチェルなどおな
じみのメンバー。作品は1655年から1680年までに描かれたもので、サブジャンルにした
がって展示されており、小規模ながら見応えのある展覧会だった。

最初に行った日は日曜だったせいで、列ができていたが、それでも15分くらいで入れた。
中は多少混んでいたが、別に見る事に不自由はなかった。翌日の月曜にもう一度
いったときは列はなし、中も空いていてゆっくりみた。

日本の展覧会では目玉作品が求められるが、ここでは別に目玉はなくて(「真珠の
耳飾りの少女」も、「牛乳を注ぐ女」もなし)といっても、「天文学者」と「地理学者」が
並んでいたり、「真珠の首飾り」があったり、と作品に不足はない。

この展覧会、ルーブル→アイルランド国立美術館→と巡回してきて、ここが最後。
ルーブルでは連日大入り満員で、列も長かったというがそれに比べれば
ワシントンはすいている。

サブジャンルというのは、テーマといってもいいかもしれないが、
手紙、レース、オウム(そう、鳥のオウムです)、背中を見せる女、などで
男性が中心になった絵がグループとして並んでいるのも珍しいかもしれない。

風俗画といっても本展の場合は、17世紀半ばからの25年間に隆盛を見た
ハイライフ(裕福な階級)風俗画に焦点をあてている。だから、農民がでてくる
ものとか、ヤン・スティーンの酒盛りシーンなどは除外されている。

このハイライフ風俗画は1950年頃ヘーリット・ダウが先鞭をつけ、テル・ボルフがそれに
加わっった。それまで歴史画を描いていたフェルメールはこの流れにインスパイアされ
て、風俗画を描き始めた。この一連の画家たちはお互いの作品から影響を
受け合った。フェルメールの題材、人物、構図などもテル・ボルフとダウ、
ニコラス・マース、ファン・ミーリエスなどの作品のバリエーションであるーー
 カタログを読むと、こういうことのようだ。

そう、並んでいる絵を見ると、どの作品がどの作品にインスパイアされたかが

テル・ボルフYoung Woman at her Toilet (1950~51年頃
よくわかる。

フランス・ヴァン・ミーリエスWoman before a Mirror (1662 頃)
フェルメール 真珠の首飾りの女 (1662〜65 年頃)
そして、この展覧会のキュレーターたちは、ではこの画家たちが何年頃どこに住んでいて
どの都市に移動したか、(つまりお互いの絵を見る機会があったか)を、当時の
記録を調べて一覧表にしている。この表によれば、画家によってはよく引っ越している
人も、旅行をしている人もいる。フェルメールはデルフトから出なかったといわれるが、
それでもアムステテルダム、ハーグ、ロッテルダムなどを訪れたことがあるのは、
この一覧表を見るとわかる。

こういう所は大変説得力がある。

これらの作品を並べて見ると、たしかに描かれた内容、構図などにおいてフェルメールが
他の画家の作品から影響されていることはよくわかるのだが、にもかかわらず、空間、
色彩において、他の画家とまったく違った独自の世界を作り出した、ということもよくわかる。

他の画家は主題を詳しく、うまく描いている。主題が持つ物語や背景を感じさせるし、
 テル・ボルフの女性の服のサテンの輝き具合など、フェルメールより素晴らしい絵もある。

しかし何かの動作に集中している女性の一心不乱さを描くことによって、その内面性を
暗示し、 それに見る者を心理的に引き込んでいくフェルメールの絵の魅力は、やはり
独特のもので、主題が同じでも他の画家の作品とはまったく違っている。
他の画家の作品は「なるほどこれが17世紀の風俗だったのか」で終わるが、
フェルメールの作品は時代を超越、さらに主題を超越している。

改めて魅力を再確認した。

最後に、この特別展にはワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵の「手紙を書く女」
と「天秤を持つ女」が展示されている。そして、普通のセクションのオランダ室へ行くと
そこには「赤い帽子の女」と「フルートを持つ女」(この作品はフェルメール周辺作家の
ものということになっている)が、展示されているのだった。

そうか、これらの作品は特別展に出してもらえなかったのか〜。(笑)
同じ館内でやっているのに、なんか気の毒でしたね。

ということで、フェルメールは特別展で10点。普通のセクションで1枚(と
「フルートを持つ女」)と、全部で11枚プラス。展覧会には2回見に行ったので、
大変得した気分になったのは事実です。